スペクトルアナライザーは万能じゃない

DTM

 

スペクトルアナライザーは、音の周波数を分析して可視化する便利な道具です。

サウンドデザインやミックス作業等、音のディティールと向き合う上で、使わないことがないくらい必須だと個人的に考えています。

ちなみに、こちらは私のお気に入りのマルチアナライザープラグインのMiniMetersです。

 

楽曲のクオリティを上げるために重要な一つの指標が、周波数のバランスです。

楽曲のクオリティが高いか低いかの判断基準が、ローからハイまで満遍なくバランス良く出ているかどうかであり、逆に言えば周波数バランスを一定に整えることがミックスのゴールの一つと言えます。

ですが、理想的な周波数バランスは楽曲ジャンルや年代によっても微妙に傾向が変わってきます。

だからこそ、自分が何か曲を作ろうとした時に、リファレンス(参考にする曲)や既存の曲のスペクトル傾向を分析することが重要なのです。

 

しかし、スペクトルアナライザーの使い方がイマイチだと、寧ろ悪い方向に音を作り進めてしまう可能性があります。

それを防ぐためには、自分が何の情報を得たいのか、何を分析しようとしているのかを意識しつつ、適宜スペクトルアナライザーの設定をいじったり、別のアナライザーと使い分ける判断が必要です。

実際に、注意点を見ていきましょう!

 

スペクトルの時間推移を意識する

スペクトルアナライザーは基本的に平面、二次元で表されます。

縦軸が音量・ボリューム・単位がデシベル(dB)で、横軸が周波数・フリーケンシー・単位がヘルツ(Hz)です。

例として、無料でダウンロード可能なプラグインであるiZotope Ozone EQを使って波形を見てみましょう。

でも実際には、音はこの2軸だけで表しきれる訳ではなく、時間推移とか位相とか様々な軸が同時に存在していますが、この記事では位相などについては一旦触れません。

時間推移を理解するための例として、アコースティックギターの音のスペクトルを分析するとどのような見た目になるかイメージしてみましょう。

 

試しにギターのE弦を1本、ピックで弾きます。

ギターの音は持続する音じゃなくて、カーブを描いて徐々に音量が減衰していくタイプの音色です。

最初ピックで弾いた瞬間の音(アタック・トランジェントなどと呼ばれる)は倍音を大量に含んでおり、ローからハイまで満遍なくギザギザした波形になります。(下図参照)

やがて時間が経つと音量が小さくなっていくのですが、ここで考えて欲しいのが、音量が小さくなっていく時、周波数バランスはどう変化するか?ということです。

約80Hzから10kHz以上まで幅広く鳴っていますが、全ての周波数が同時に小さくなるでしょうか?

それとも低い音から?高い音から?

 

答えを言うと、周波数バランスは一定ではなく倍音、つまり高い方の周波数成分から先に減衰していき、最終的に低い音だけが残るという変化の仕方をします。(下図参照)

この記事の冒頭で、ミックスのゴールは周波数バランスを一定に整えることだと言いましたが、

仮に、ギターのスペクトルが一定になるよう、ボリュームの減衰に伴って反比例するようにEQでハイをブーストしていくという処理をすれば、小さく留まっていたホワイトノイズ成分が増幅されるような音となり、結果的に人工的で不自然な音になってしまいます。

狙ってそのような音作りをしているのであれば問題ないのですが、意図せずそうなってしまっているという状態であれば良くないです。

 

周波数バランスが一定ではなく、変化する方が音楽的に自然な場合もあるということは念頭に入れておきましょう。

 

スペクトルの時間推移を正しく観察するには、アナライザー上でのスペクトル表示の変化速度を変えるといった工夫が必要です。

Ozone EQであれば、歯車アイコンを押してSpectrum > Avarage timeを短くすると、波形表示の切り替えを速くしたり遅くしたりできます。

 

スピードが遅めだと、楽曲のサビなどのセクション全体の大まかなスペクトルバランスを把握するのに適しています。

逆にスピードが早めだと、細かいスペクトルの変化を分析してコントロールするのに適しているという感じです。

 

地図を拡大して見たり、縮小して見たりするのと似ています。

マップで、住宅街を拡大して見ている状態からアメリカまで行くのは大変ですし、地球全体が映っている状態なのに目当てのお店を見つけるのは難しいですよね?

 

周波数の内訳を意識する

曲が出来た後、自作曲の周波数バランスを、リファレンスのバランスと見比べながらなるべく近づけて行く作業をすると思います。

しかし、ここで意識しなければならないのが、リファレンス曲を分析して分かるのは、あくまで2mix音源全体のバランスだけということです。

 

例えば、リファレンスのサビのスペクトルを分析した結果、60Hz辺りに一番デカいピークがあって、200Hz辺りから10kHzまでキザキザしつつもおおむね平ら、10kHz以降が緩やかに削れている、みたいな波形だったとしましょう。(下図参照)

 

自作曲のマスターバスにEQを挿し、めちゃくちゃEQを弄ってサビのスペクトルバランス一見同じ形に出来たとしても、個々の楽器の音量バランスまで同じとは限らないのです。

 

ローのピークの音量バランスはキックが優位か?それともベースが優位か?

ローはベースとウワモノが混ざっているか?ウワモノのローカットをしていてベースのみか?

ローミッドの内訳はベース優位か?ピアノ優位か?

ハイの内訳はシンセの倍音成分か?ノイズ成分か?ハイハットか?などなど…

 

色んなパートが合わさって結果的にその周波数バランスになっているということを念頭に置いて、

各帯域を何のパートが、どういうバランスで占めているのかを意識してみましょう。

 

ローミッドをやたらと削ったり、ハイをやたらとブーストしないとリファレンスに近づかない、尚且つ個別のトラックが結果的に不自然な音に聞こえるのであれば、

音選びやトラック構成、アレンジの段階から見直した方が近道かもしれません。

 

更に時間推移の話と組み合わせると、同じハイが出ている曲でもハイハットがデカめの曲なら音と音の隙間のハイはスカスカになり、Super Sawでコードをベタ弾きしているような曲ならハイは常に埋まっているような見た目になる筈です。

 

もしリファレンス曲のステムやパラデータ(ギターやドラムなどの個別のトラック)が聞ければ、もっと高精度で周波数バランスを似せられると思いますが、

そうでない場合は2mix全体のスペクトルを見つつも個々の音を想像するという視点が必要です。

 

森の外枠・シルエットだけを見て、どの木がどんな形をしているのか、どの木が背が高いのかを想像する感じ、でしょうか。

 

終わりに

いかがだったでしょうか。

私の最近の編曲のやり方として、最初からミックス段階での周波数バランスを見越して楽器編成を考えたり、フレーズを考えたり、音作りをすることが多いです。

楽曲のセクション展開に合わせて、Bメロよりもサビでは倍音をしっかり出す、周波数のレンジをより広く使うなども演出テクニックの一例です。

 

是非スペクトルアナライザーを利用して、よりカッコいいサウンドを作れるように練習していきましょう!

私、みつたねが直接ご指導いたします。
ご利用お待ちしております。
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